妊活のためにクリニックに通って治療や指導を受けているという方の中には、生理周期を整えたり排卵リズムを作るためなどの理由で、ピルが処方されることがあります。
こうしたピルはある程度の期間、継続して飲み続けることもあり、妊活のためには大切な治療の一環となりますので、医師の指示に従って服用する必要があります。
しかし、妊活中の女性の中には妊娠時の胎児の神経管閉鎖障害の予防のためや、自身の妊活のサポートとして葉酸サプリメントを飲んでいるという方もおり、ピルと葉酸両方飲んでも大丈夫なのか不安に思われる方もいるようです。
ピルが処方されたときにその場で葉酸との飲み合わせについて相談できれば良いのですが、なかなか聞けない雰囲気だったり、聞いても「大丈夫」とし言われず不安な気持ちが晴れないという方もいるのではないでしょうか?
葉酸サプリメントを飲んでいることでピルの効果が失われてしまい、治療に影響が出てしまうのではないかと不安に思う気持ちよくわかります。
そこで今回は、ピルと葉酸サプリの飲み合わせについてお話していきたいと思います。
妊活中に病院でピルを服用するケースは意外とある
ピルと言えば、「避妊薬」のイメージが強いため、妊活中に処方されると「え?」と不安に感じてしまうこともあるでしょう。でも、実は妊活のためにピルを服用するケースは意外と多いんです。
低用量(中用量)ピルの仕組みとは?
ピルの主成分は女性ホルモンの「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」です。この2つのホルモンはもともと女性の体内で自然に分泌されるホルモンですが、エストロゲンとプロゲステロンが同時に大量分泌されているのは妊娠している時です。
ピルを服用することで、脳が妊娠していると思い込み排卵がおこらず、生理がとまります。服用をやめるとホルモンバランスが通常に戻るので脳が「妊娠してなかった」と判断し生理をおこします。
妊活のためにピルを服用するケースはいくつかあるので、それぞれ簡単に説明しますね。
生理周期をコントロールするため
妊活中に病院でピルが処方されるケースで最も多いのが、生理周期を整える目的で処方するケースです。
ピルは女性ホルモンの「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」で構成されており、服用することで人為的にホルモンバランスを整えていく働きをしていきます。この働きを利用して卵巣機能不全を改善させたりするために、ピルが使われるのです。
具体的には、不安定な生理周期を安定させることができたり、無排卵の状態でも人工的に生理を起こして生理周期をリセットさせるといったことが可能になります。
また、意図的に数カ月排卵を抑えたあとのリバウンド効果を利用して、自然排卵が起こるように排卵リズムを整えていくカウフマン療法の一環にピルが利用されることもあります。
体外受精の前にも処方されることがある
体外受精を行う前などにも、プラノバールなどのピルが処方されることがあります。採卵には排卵誘発剤などを使って排卵を起こして行われますが、その前にピルを使って一定期間卵巣を休ませることがあります。
これには卵巣に負担がかからないようにする目的と、卵巣を休ませることでバラバラに大きくなっていく卵胞の成長度合いを調整し体外受精にとって状態のよい元気な卵子を育てるためといった目的が含まれています。
不妊症の原因となる病気の治療のため
子宮内膜症や卵巣嚢腫は不妊症の原因となります。これらは生理を繰り返しながら進行していくので、ピルを服用することで一時的に生理をとめ、病巣を小さくします。この治療法には、ピルを服用することで体を閉経と同じ状態にする偽閉経療法と、妊娠に近い状態にする偽妊娠療法の2つがあります。
子宮内膜を維持するため
黄体機能不全の人は、黄体ホルモンの分泌が少ないため子宮内膜がはがれやすく、妊娠しても流産しやすくなります。排卵後にピルの後半部分を服用することで黄体ホルモンを補充し、子宮内膜の維持を助け妊娠を継続しやすくします。
ピル服用中に葉酸サプリを飲んでも平気?
もし、葉酸サプリを飲んでいるときにピルを処方された場合、どちらかに影響してしまうのではないかと不安に思われる方もいらっしゃることでしょう。
まず、葉酸は薬ではなく単なる栄養素なので、ピルと飲み合わせることは問題ありません。飲み合わせることでピルの効果が半減してしまうということや、副作用が出ることもないので安心してください。
ただし一部の薬品の中には、血液中の葉酸濃度を下げてしまうものがあるという報告がされているため、葉酸不足にならないよう注意が必要です。
葉酸の吸収や代謝に影響を与え、血中葉酸濃度を低下させると言われている医薬品のなかで、ピルとの関連があるものは以下の通りです。
卵胞ホルモン製剤 | エストラジオール |
黄体ホルモン製剤 | 酢酸メドロキシプロゲステロン |
経口避妊薬 | レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール |
ノルエチステロン・エチニルエストラジオール |
上記の「経口避妊薬」がいわゆるピルにあたるものですね。
レボノルゲストレル・エチニルエストラジオールはトリキュラーやアンジュ、ラベルフィーユなど。ノルエチステロン・エチニルエストラジオールは、ルナベルとオーソ、シンフェーズのことを指しています。
短期間の服用であれば、そんなに心配する必要はないかと思います。ほかの製剤については、影響が報告されてはいませんが、心配な場合にはかかりつけ医に念のため聞いてみてくださいね。
妊活中に葉酸サプリを摂取することでメリットはある?
サプリメントで葉酸を補充することで、食品からよりも確実に葉酸を摂ることができます。
一部の経口避妊薬やホルモン製剤には、葉酸の吸収を妨げて血中葉酸濃度を低下させてしまうものがあると報告されていることは先ほどお話した通りです。
該当するピルなどを利用している場合、食品からでは葉酸が足りなくなってしまう可能性があり、そのまま妊娠に至った場合胎児へのリスクが高まります。
短期間のピルの服用で、そこまで深刻な葉酸不足になることはないとは思いますが、サプリメントで葉酸を摂取しておくと、葉酸不足の心配が減るのは大きなメリットだといえるでしょう。
また、生理周期の乱れを正す目的でピルを処方されている方の場合、ホルモンバランスの乱れが関係していることも考えられます。葉酸は血流を良くして間接的にホルモンバランスを整えていくといった効果が期待できますので、そういう面でもサポートとなるでしょう。
まとめ
妊活でピルを処方された場合、葉酸サプリと飲み合わせてもピルの効果が半減したり、副作用が出ることはありません。
ただし、一部のピルの中には、葉酸やビタミンB群の吸収を妨げてしまう物もあると報告されているため、長期間にわたってピルを服用する場合には葉酸不足にならないよう注意が必要です。
ピルを処方された時点で葉酸サプリを飲んでいるという方は、葉酸不足を予防するためにも、葉酸サプリメントを飲み続けたほうが安心ですね。