気分が落ち込んでしまいやすかったり、集中力が落ちて仕事などが手につかないなどといったメンタル面での症状や、不眠や食欲低下、強い疲労感や倦怠感を感じるなど、さまざまな症状が起きてしまうこともある「うつ病」。
そんなうつ病に、葉酸が効果を発揮するのをご存知ですか?
もし、自分の大切な人がうつ病で苦しんでいたとしたら、少しでも葉酸を活用して、症状の改善に役立ててほしいと思いますよね。
うつ病は、誰でもなる可能性がある病気です。
年齢にかかわらず、15人〜20人は、一生のうちに一回はうつ病になるとされ、比較的発生頻度の高い病気なのです。
今回は、そんな葉酸と、うつ病の関係性について、調べてみました。
まずは、葉酸を摂取することによる症状緩和などの効果面についてお話ししたいと思います。
葉酸がうつ病の症状緩和に効果的?
葉酸が、うつ病の症状緩和に効果があるというのは、本当なのでしょうか?
2007年に東京大医学部で行われた研究で、葉酸がうつ病の予防や改善に効果があることが実証されました。この研究では、うつ病を患う患者さんの食生活を調査したところ、8割の人が葉酸不足だったことがわかったのです。
その調査結果を元に、葉酸不足だった人に葉酸を摂取してもらうと、服用していた抗うつ剤の効果が上がったことが報告されました。
またこれとは別に、もともと抗うつ薬への反応が悪い人に対して、抗うつ薬と一緒に葉酸を摂取してもらうようにすると、60%程度だった抗うつ薬の反応率が、90%程度にまでアップしたという報告もあります。
こうした研究の結果を受けて、実際の医療現場では、うつ病や自律神経失調料失調症を改善させるための薬と一緒に葉酸を含むビタミン剤を処方いるところもあるようです。
葉酸は、妊婦さんやお腹の赤ちゃんだけに効果があると思いがちですが、すでにうつ病患者さんのためにここまで研究され、医療現場でも摂取が勧められているとは驚きですね。
でも、どうして葉酸がうつ病に効果があるのでしょうか?
どうしてうつ病の症状緩和ができるの?
ではなぜ葉酸が、うつ病の症状緩和に効果的だとされているのでしょうか?
どのように働いてうつ病の症状を緩和してくれるのか、気になるところですよね?
うつ病の原因は、現在ではまだはっきりしておらず、いくつもの要因が複雑に絡み合っているとも言われています。
ひとつ言えるのは、心に大きなダメージを受けた事や積み重なったストレスなどが、要因となっているということです。
こうした心の状態というのは、脳から発せられる神経細胞への電気信号が関係しているといわれています。
うつ状態など心の病になると、この電気信号を伝えるための伝達物質が減り、うまく信号が伝わらなくなってしまうとされているのです。
実は、葉酸は、こうした伝達物質の合成や分泌を助け、心を司る神経系に良い効果をもたらすとされているのです。
「5-メチルテトラヒドロ葉酸」は脳の中で、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの3つの神経伝達物資の合成を助ける物質です。これらは、心の安定には必要不可欠な物質とされており、不足することによって心のバランスが乱れることがわかっています。
こうした脳内伝達物質には、それぞれこのような働きがあります。
ドーパミン
人間の「快感」を操る神経伝達物質。報酬を得た時に「やった!」と気持ちが高揚するのはドーパミンの仕業です。
ノルアドレナリン
危険を感じると、自分の身を守るために、心身を臨戦態勢に整えてくれる神経伝達物質です。何かトラブルがあったとき、頭の回転がいつもより早くなったり、とっさに身構えたりできるのはこのノルアドレナリンの仕業です。
セロトニン
精神面に大きな影響与え、心の安定や安らぎに関与。家族や恋人、ペットとのスキンシップなどでセロトニンの分泌が増加すると言われています。別名幸せホルモンなどとも言います。
葉酸不足によって、この3つの神経伝達物質が、きちんと生産されなかったり、バランスが崩れたりすると、健康な心を保てなくなってしまうのです。
例えば、
- ドーパミンが不足しますと、何事にもやる気がなくなり、行動ができなくなります。
- ノルアドレナリンが不足すると、トラブルがあった時に対処できず、ストレスに弱くなります。
- セロトニンが不足すると、何事にも心が動かなくなったり、怒りっぽくなったりします。
このように葉酸には、心や精神面を司るさまざまな神経伝達物質との関連性があるということが確認されています。こうした物質をバランスよく分泌させるためにも、葉酸の摂取は大変重要であると考えられているのです。
では、実際、葉酸を摂取しようと思った時、うつ病の場合では、どうやって摂取して行けばいいのでしょうか。
うつ症状がある場合の葉酸の活用法は?
うつ病がある場合の葉酸の摂取、よりよく取り入れて活用していくには、どんな方法があるでしょうか?
うつ病の症状がある方は、脳内の伝達物質が不足しがちですので、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどが不足しないように、葉酸を積極的に取り入れることが重要です。
もちろん、葉酸は食品からとってもかまいません。しかし、普段からバランスの良い食事を完璧に心がけ、葉酸の摂取量もクリアするとなると、ちょっと難しいですよね。
そんな時は、サプリメントなどに頼っても全く問題はありません。
うつ病患者さんのための葉酸の摂取量は1日200μgから500μgが望ましいとされています。
ほとんどの葉酸サプリメントは、一回に400μg摂取できるように作られていますので、バランスの良い食事にサプリメントで補う気持ちで服用するとちょうどよいですよね。
また、神経伝達物質の合成には葉酸が深く関わっていますが、他の栄養素も関係しているとされています。
- ドーパミンの分泌を助けるもの・・・チロシン、レシチン
- ノルアドレナリンの材料となるもの・・・チロシン、フェニルアラニン
- セロトニンの材料となるもの・・・トリプトファン、ビタミンB6、鉄分
これらの栄養素も、葉酸と同様に必要になってきます。
こういったものと一緒に葉酸のサプリメントを飲んだり、合わせて配合されているサプリメントを利用すると、より一層効果が期待できますよね。
しかし、病院にかかっていて、医師からの処方薬を服用している場合は、安易にサプリメントを飲むのはよくありません。
なぜなら、葉酸と相性が悪いお薬があるからです。
場合によっては、葉酸がお薬の効果を弱めてしまったり、逆に薬が葉酸の吸収を妨げたりということが起きてしまうお薬があるんです。例えば、解熱剤やピル、睡眠薬や抗生物質などは、葉酸の吸収を妨げてしまう代表的な薬だとされています。
また、医師がビタミン剤などを意図的に処方している場合などでは、重複して摂取してしまうことになり、医師が意図しない効果が表れてしまう可能性もあります。
ですから、なんらかのお薬を医師に処方されていて、サプリメントの服用を考えている人は、自分のお薬がそれに該当するかしないのかを、かかりつけ医に必ず相談しましょう。
すでに実際の医療現場では、抗うつ薬の処方と一緒に葉酸の摂取を勧めているところもあることから、積極的に相談してもなんら問題はありません。
しかし、症状の改善が見られた際に医師がサプリメントの摂取の事実を知っているか知っていないかによって、その後の治療方針などに影響が出てくる場合もあります。
そうした問題を避けるためにも、できるだけ相談をしてから摂取するようにすることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか?
葉酸は、うつ病の予防、改善に効果があることがすでに実証されています。実際の医療現場では、抗うつ薬の処方と一緒に葉酸の摂取を勧めているところもあるほどです。
うつ病の原因は、複雑な要素が絡み合っていますが、そのうちの一つの要因が「心へのダメージ」です。
心のケアでは、ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニン、この3つの神経伝達物資が深くかかわっており、この3つの合成に葉酸が関係していることがわかっています。
葉酸不足ではこの3つの合成がうまくされず、心のバランスを崩してしまうことがわかっています。因果関係ははっきりしない部分もありますが、補うことにより心が安定する可能性が高まることは、十分に考えられるでしょう。
うつ病患者さんの葉酸の摂取方法ですが、食品由来の葉酸でしたら問題ありません。
しかし、サプリメントの場合はお薬との相性が悪いケースもありますので、自分が服用しているお薬に問題がないか、かかりつけ医に相談してから、利用するようにしましょう。